4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(2)外来種
(684)帰化植物ってなあに?
「ねえ、花ちゃん! モンタ博士のLABO(研究室)に遊びにいこうよ。」
「うん。いいよ。今日はどんなお話が聞けるのかな。きれいなお花のお話かな。それとも何かめずらしい虫のお話かな。どっちでもいいけど、ともかくとても楽しみね。」
「あれ? あそこにオレンジ色のちょっと大きめの花が咲いているよ。何かな。」
「あれは、ナガミヒナゲシという植物よ。あちこちでよく見られるわ。ヒナゲシともいうポピーってあるでしょ。その仲間ね。ナガミヒナゲシはその実が、ふつうのポピーにくらべると少し長いのよ。」

(ナガミヒナゲシ)
「ふーん。ちょっと大きめの花でよく目立つね。それから、あそこには、ちょっと小さいけど、水色っぽい花もいいね。」
「これはね、マツバウンランというのよ。葉っぱが細長くて、マツの葉に似ているからなのよ。ナガミヒナゲシもマツバウンランもどちらも帰化植物ね。」

(マツバウンラン)
「帰化植物か⋯⋯帰化植物って、外国から来た植物でしょ。」
「それはそうだけど、わたしもくわしくは分からないわ。あっ! そうだ。今日は、モンタ博士に帰化植物について、きちんと教えてもらおうか。」
「そうしてくれると、ぼくはうれしいな。あっ! モンタ博士LABOに着いたぞ。モンタ博士! こんにちは。」
「今日は、帰化植物について、くわしく知りたいので、教えてください。」
「そうか、それではまずクイズだよ。帰化植物というのは、今、日本にどのくらいあると思う。」
「たくさんあるんでしょうね。200種とか300種くらいですか。」
「もっとあるんじゃないかな。500種とか600種とか。」
「答えは1200種ほどあるそうなんだ。日本の植物が5000種として、4分の1は、帰化植物と言ってもいいくらいなんだよ。」
「えっ! 4分の1もですか。それじゃ、『犬も歩けば帰化植物に当たる』というわけですか。」
「そうだよ。深い森の奥とか、高い山とかは別として、あちこちに帰化植物が見られるということだね。」
「ところで、モンタ博士! 帰化植物って、いったいどういうものなんですか。帰化植物って、きれいなものもあると花ちゃんが教えてくれましたが⋯⋯。」
「わたしは、セリバヒエンソウとか、ユウゲショウなども、とてもかわいくてきれいなお花だと思いますが⋯⋯帰化植物って何なんだろう。」
「帰化植物については、ある有名な植物学者がきちんと記しているんだよ。つまりね、帰化植物とは、『人間の活動によって、外国から日本に持ちこまれ、日本で野生化した植物』というものなんだ。」(平凡社:日本の帰化植物より)
「『人間の活動によって』とは⋯⋯。」
「作物、薬草、栽培の花などの目的とは別に、運ぶ物にまぎれこんだり、知らずに運ばれたりということさ。」
「外国から日本に持ちこまれとは⋯⋯。」
「これは、国境をこえてという意味なんだ。日本は島国だから分かりやすいね。」
「日本で野生化したとは⋯⋯。」
「野生化とは、育てる目的ではなくて、野生状態で生育し、花を咲かせ実をみのらせ、子孫をふやしているということなんだ。」
「つまり、外国からの新しい友達が来たということですね。」
「それなら、新しい友達がたくさんになって、いいことですね。」
「ぼくも、あちこちにきれいなお花がふえて、いいと思います。」
「でもね、帰化植物は、日本にもともとはない植物だろう。それにふえる力を繁殖力というけど、その力が強いために、今まで日本に見られていた植物の生育場所を、うばってしまうこともあるんだ。」
「なるほど、それは大きな問題ですね。」
「それに、今まで生育していた植物が変化すれば、そこに生きていた昆虫や小動物にも影響をあたえてしまうんだ。」
「つまり、日本の植物を中心として広がる生態系を、帰化植物がこわしてしまうというわけですね。」
「なるほど、いろいろとむずかしい問題があるのですね。何とかならないかな。」
「特定外来生物という、より影響力が強くて特に注意すべきものは、厳しい規制があり、国や自治体が防除(⋯⋯ふせいだり・のぞいたり)を行っているんだよ。」
「困りましたね。何かよいアイデアはないのでしょうか⋯⋯。あっ! そうだ。帰化植物みんなが悪い影響をあたえるわけではないでしょ。もっとわたしたちが、帰化植物のことを知ったほうがいいと思うの。それでね⋯⋯。」
「それで、どうするの? 花ちゃん。」
「それで、みんなで『帰化植物人気投票総選挙』をやりましょう。」
「えっ! 『帰化植物人気投票総選挙』? なんだそりゃ?」
「そうか、帰化植物だって、悪いやつばかりじゃないよね。目を楽しませてくれるものもあるよ。きれいだなと人気のあるものもあるよね。」
「それを知れば、同時に、帰化植物についての知識ももっと広がるでしょう。」
「なかなか良い考えだと思うよ。モンタ博士もいっしょにやらせてほしいな。」
特定外来生物とは⋯⋯
海外起源の外来種であり、生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を及ぼすもの、または及ぼす怖れのあるものの中から指定されたものである。環境省ホームページには、日本の外来種対策として、特定外来生物等一覧が記載されている。それによると、植物では、ブラジルチドメグサ、ボタンウキクサ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、アレチウリ、オオフサモ、オオカワヂシャなど19種類があり、他には、哺乳類25種類、爬虫類カミツキガメなど22種類、両性類ウシガエルなど15種類、魚類ブルーギルなど26種類、軟体動物など5種類、クモ・サソリ類7種類、甲殻類6種類、昆虫類セイヨウオオマルハナバチなど27種類がある。なお、アメリカザリガニについては、令和5年6月1日から、アカミミガメとともに特定外来生物一覧に追加となるそうです。なお、上記の2種(アメリカザリガニ・アカミミガメ)については、一部の規制が適用除外となります。詳細は、環境省HPを参照してください。